どうか今だけは、いい夢を。


嵐のことはさ、ツイッターにいくらでも書けるんだよ。

番組の感想も、コンサートのレポも。

でもあなたの事は迂闊にツイッターに書けない。
だからブログに書くしかないけど、それでも書いては消し書いては消しの繰り返し。しまいには書きながら涙が出る。

それでも、それでも、応援したい。



嵐のライブが京セラドームで11月27日から30日にありました。

NHK杯なみはやドームで11月28日から30日にありました。

フィギュアスケートは観戦しに行かないいって勝手に決めてる。

正直、嵐もフィギュアも現地で見るのには学生の私にはあまりにもお金がかかりすぎるから。

イベントやライブに行くのは嵐だけにしよう。
その変わりケーブルテレビを繋げよう。フィギュアのアイスショーや全試合、テレビ観戦は出来るようにしよう。

これが私の追いかけ方だった。
フィギュアも応援しようとなった時に勝手に決めた私の定義だった。

その週に入ってから世間はゆづの話題で持ちっきりだった。NHK杯に出るのか?とか出場と決まれば前日公式練習はどのようなものだったか?とか。毎日毎日ありとあらゆるニュースを全部張って、夜な夜な編集して、正直、しんどいなこれって思ってた。

でも、何よりもNHK杯にゆづが出てくれることが嬉しかった。
本当に本当に嬉しかった。

28日がSPの日だった。
その日私は嵐のライブだった。

誰にも言ってない、誰にも言ってないけどさ、嵐の開演前に「ゆづがうまくいきますよーに!」って心の中でずっと願ってたんだ。

今回はテレビ観戦も出来ないけど、気持ちだけ届けばいいって。それが私の追いかけ方だったから。

嵐のライブ中は一度もゆづのことを思い出したりしなかった。あの時間は夢のようなものだから。現実の嫌なこと、気掛かりな事をライブ中に思い出したことはない。

ライブが終わって、超浮かれてて、あ〜幸せだな〜とか思って、規制退場まで時間があるからツイッター開いてレポをポチポチ打ってるときに、今ゆづのSPの結果見るべきなのかなって悩んでた。

それが「あ!そういえばゆづどうなったんだ!」って感じじゃなくて「ゆづの結果見るべきかなあ〜」って感じだったの。きっと、それは、ライブ中確かに思い出しはしなかったけど、ゆづのこと忘れてもなかったんだよ。ずっと頭の奥片隅にはあった。だから、ライブ終わったとき必然的にそう思った。

スケートの方のアカウントに行くのは面倒くさいからツイッターで検索をかけてみる「羽生」と。

そこですぐに出てきた。「羽生 五位」
それを見ただけでグッタリしてしまった。五位ってことは何かがよくなかった。何を失敗したんだろう。やっぱり入りにくかった3Lz-3Tかな。いや、4Tかもな。まさか、3Aがミスるわけない。
すぐさま繰り広げられる思考。

ああ、見るんじゃなかった。
ああ、二つのものを追いかけるってこんなにもしんどい。

そう痛感した。

家帰ってNHK杯を見るか本当に悩んだ。
嵐でこんなに幸せな気持ちなのに、今フィギュア見たら気分絶対落ちるよな。どうしよう。どうしよう。

結局、すぐには見れなくてなんか頭にも入らないくせに無理に勉強したりして(月曜テストだからw)、フィギュアを見れたのはド深夜。

この目にゆづの演技を焼き付けて、しっかりと受け止めた。

大丈夫。一位とは八点差だ。こんなの十分射程圏内。まだ、ファイナルの道が閉ざされたわけじゃない、大丈夫だ。明日のFSでがんばろうね。

この言葉はゆづに言ったのと半分、自分にも言い聞かせてた気がする。

4Sも4Tも決めてガッツポーズするゆづをイメージして、そう思い描いて、寝た。



次の日のFS、私が思い描いてたゆづはいなかった。

4Sが2Sになって、4Tが3Tの上、転倒。
目をつぶりたかった。

苦しい。好きな人が負ける姿を見るのはこんなにも、苦しい。

でも、不思議とね、悔しくはなかったんだよ。

FSを見て、最初に浮かんだ感情が「次頑張ろう」でも「悔しいね」でもなく、「ありがとう」って気持ちだった。

NHK杯に出てくれて、ありがとう。

帰国後、初めて氷に乗ったのが20日頃。リンクを濡らしたのは、充実の汗ではなく、悔し涙だった。ジャンプを跳べる状態には程遠く、泣きながら滑り、欠場の可能性を周囲に訴えた。「出られないかもしれない」

ゆづがNHK杯出場決定したときの記事。

一週間前はこんな状態だったんだよ。
なのに、私たちファンに演技を見せたい、ファイナルに行きたい、その思いの為だけに、絶えて絶えて、あなたは氷上にこんなにも早く戻ってきてくれた。戻ってきてくれただけじゃなく、四回転ジャンプが跳べるまで頑張ってくれた。

今、この場にあなたがいること、そして最後まで滑り切ってくれたこと、それだけで本当に嬉しいんだよ。
ありがとう。本当にありがとう。




あなたは月曜日のおは日のインタビューでこう言った、 

「(FSの)演技後、更衣室で泣いてました、悔しくて。悔しくて、悔しくて、仕方なくて。もうどうしようもなかった。何をどうしようと考えながらひたすら涙が出てました。」




うん、知ってたよ。
そんなこと、多分見てた人みんな知ってた。

だって、私たちの前では一度もその涙をこぼすことはなかったけど、ずっと我慢してたじゃない。

キスクラでのインタビューでもずっと目が赤かったじゃない。

でもあなたは、不意に涙がこぼれそうな時に、そのまま泣くんじゃなくて、グッと堪えて、泣く変わりに、笑う人だから。

笑うのが辛くても、見てくれてる人、応援してくれてる人のために微笑む人だから。

自分が満足いく演技が出来れば涙を見せるけど、満足いく演技が出来なかった人は、涙なんて見せる資格もないってきっと思ってるような人だから。

泣くほど痛くても、氷の上に戻ってくる人だから。

「これは怪我のせいなんかじゃない」「いい演技を見せることができなくて申し訳ない」って言い訳一つせず観客に謝る人だから。


あなたの血の滲むような努力をみんな知ってるし、わかってる。

謝らなくてもいいんだよ。
みんなの前で涙流したっていいんだよ。


私たちファンもきっと何かを勘違いしてた。

今まで奇跡を起こしてきたゆづだったから。

震災後の12年ワールド。SP七位で出遅れてからFSでまさかの三位。初出場で台乗り。当時17歳だったゆづがいきなり世界のトップ選手として躍り出た。

ソチ五輪日本3枠獲得に向けて望んだ13年ワールド。全日本チャンピオンとして望んだゆづだったが、体調不良の上、足首を痛めてしまい状態は最悪。SPはまさかの九位。しかし次の日のFSで渾身の演技を見せ、四位に食い込み無事3枠獲得。

五輪チャンピオンとして望んだ14年ワールド。今シーズン世界最高記録を叩き出しまくってたSPパリの散歩道でまさかのミス。三位発信。しかし、底力を見せFSノーミスで大逆転優勝。

そして、初のSP100点超えをしたソチ五輪。確かにFSではミスがあって一度は金メダルを誰もが諦めたが、最大のライバルも同じだけミスをしてくれまさかの日本人男子初の金メダル。

何かアクシデントがあっても奇跡を起こすような男だったから。
ほんとに漫画やドラマのような勝ち方をする男だったから。

私たちはいつの間にか何かを勘違いして、何か彼に多大な期待を背負わせて、今回も奇跡が起こるんじゃないかと思ってしまっていた。





彼が、傷ついてないわけないのに。
ここに戻るまで彼がどれほどの努力を積み重ねてたのかも忘れて。

これは漫画の世界じゃなくて、現実の世界で。これが現実なんだ。

彼は漫画の主人公じゃなくて、ただの19歳の少年。

そういうことにやっと気付いた。


ただ、FSの演技が終わった時に確かに全員が感じた違和感。

いや、本当はずっと違和感を感じてはいた。それを見てないフリをしていただけで。

大会二日前の非公式練習で、驚くほど綺麗に四回転ジャンプや三回転ジャンプを決めまくってた彼。時折、オーサーと談笑して。いつも通りの彼に、その時ひどく安心した。

彼は完璧に復活していると思った。
でも考えてみれば、あの事件からたったの三週間しか経ってない。

しかもその間、世間はゆづのあの事件に静寂を保っていたかと言えばそうじゃない。
強行出場だと言われ、あれは出てよかったのか?と沢山のワイドショーで議論されて、時にはスケ連やコーチを批判する人がいて。

それをゆづは日本で、ずっと、見てた。
きっと、ずっとずっと見てた。

そんなもん、傷ついてないわけがない。
事故のこと完璧忘れられてるわけ、ないんだよ。


SPのショパンバラード一番は、最初音楽が鳴っても10秒ほど止まったまま前だけを向いてるっていう振りだ。その時の目がどうしようもなく泳いでいた。目をつぶるわけでもなく、前を向くことも出来ず、少し俯き加減で目が泳いでいた。

逆転に燃えていたFS。いつも逆転がかかってるFSはもっと人殺しそうなほど目がギラついて、瞳の奥に炎がメラメラ燃えてるのを隠そうともしないのに、何かが違った。演技前のリンクに入る時、迷いだらけだった。

ファントムが始まった最初の目つきの鋭さは中国杯とほぼ一緒だった。
なのに、ゆづが口パクで気持ち良さそうに歌って仮面を外す振りのところで、中国杯ではあんなに気持ち良さそうに滑ってたのに、NHK杯は全然気持ち良さそうじゃない。むしろ目の奥が何故か霞んで見えた。

いつもと違うところなんて沢山あった。

違和感を感じていたのに、見て見ぬ振りをしてた、ゆづも、私たちも。

そしてFSが終わった時にあの違和感が本物だったことに気付いた。



これは、この違和感は、技術的なもののせいではない。
ゆづも言っていたけど、練習でも六分間練習でも四回転を跳べているのだ。

技術的なもののせいではない。

その時にやっと違和感の正体に気付いた。
違和感は感じていたのに違和感の正体はFSが終わるまでわからなかった。

きっと、本人もFSの演技が終わるまで気付いてなかったんだと思う。


自分が思っていたよりも傷ついていることに。
どうしようもなく心が弱くなっていることに。


正直に言うと、ここまで弱りに弱ってるゆづは初めて見た。

公式練習の時も何度も他の選手と接触しそうになって、過剰に避けてるゆづを見た。
事故前まではスレスレのところで選手同士がすれ違うことはよくあったのに、今回のゆづは他の選手が少し近づいただけで過剰に、ほんとに過剰に、避けていた。

あの事件のことがやっぱりトラウマになっている。

そういう心の弱りや、あの事件のトラウマなどが重なって、本来のペースを取り戻せなかった結果があれだ。

その結果が今回の試合の結果に繋がってしまった。


ゆづはFSの演技後、インタビューでミスの原因は技術的なもの?精神的なもの?と聞かれて「精神的な部分が強いんじゃないんですかね。」とすぐに言った。「精神状態をコントロールする力が足りなかった」と言っていた。

NHK独占インタビューではこう言っている、「FSの六分間練習のとき、あれだけは怖かった。あのぶつかった瞬間を思い出してしまった。誰もいないのに、ずっと後ろの方向ばかり気になってて、ちゃんと踏み切ってるのにうわの空。」

私たちが気付いたと共に、彼も全ての原因に、自分の心が弱くなってることに、気付いていたのは本当によかった。

彼は昔から自分のことを客観的に冷静に見ることが出来る人だ。
そんな頭の良い人だったのが、幸いだった。



そして、あのFSから一夜明けて30日、彼が選手のトークショーでNHK杯はどういったものかと聞かれてこう言った、

「このような状態でも最後まで滑り切ることが出来て、またファイナルを決めることができてよかったって思っています。」


ほらね。
やっぱりあなたはわかってる。

昨日のキスクラインタビューでは「いい演技を見せることができなくて申し訳ない」と言っていて、それは違うよって思っていたけど、次の日には、そんなこと一切言わず前向きに感謝の気持ちを口にした。

NHK杯に出場し、最後まで滑り切れたこと、それがまずよかったんだよ。
一夜明けてそう思えてくれて、よかった。


FSから一夜明けた彼は、昨日とは人が変わったようなコメントばかりを残した。


報道陣へのコメント。

「今の弱くなってる自分は嫌い。でも弱いということは強くなる可能性がある」

「これだけ沢山乗り越える壁を作っていただいてこんな楽しいことない。しっかりその壁を打ち砕かないで乗り越えていきたい」

「乗り越えた先にある景色は絶対にいいと信じてるからこそ楽しんでいける」

「五輪チャンピオンとか、世界選手権チャンピオンとか、ファイナル二連覇とかもうそういうのじゃない。チャレンジャーとして、ファイナルの最後の最後の一枚の切符をギリギリ掴んだチャレンジャーとして頑張りたい」

「出場する日本人最下位として、思い切って一番上狙って行きます」

「逆境は嫌いじゃない」


なんだよ。もうこんなにも前を向いているじゃん。

まるで昨日までの自分を全て捨てて、リセットしたみたいに。或いは、何か大事なものを取り戻したみたいに。

これらの強気かつ前向きな発言を聞いたとき、ああ、もう大丈夫だと確信した。

彼は五輪チャンピオンとか世界選手権チャンピオンとか世界ランキング一位とかそういった肩書きをここで全て捨てた。
なくなったんじゃなくて、自ら捨てた。

この「日本人選手最下位として」って言った後、ゆづったらフッて笑うの。
その後に「思い切って一番上を狙って行く」

「チャレンジャー」か。
なんて、なんてワクワクする言葉なんだろう。

そうだった。彼は逆境に強い男だった。
昔から周りに無理だと言われても、自分は絶対勝てると信じて、自分より上にいる選手にぶち当たっていく、そして最後には本当に勝っちゃう人だった。

久しぶりにボロ負けして、全てを捨てて、チャレンジャーになった彼は、きっと、強い。

だから、もう大丈夫だ。

だって下がるところまで下がれば、後は上がるしかないんだから。


今回のNHK杯を一言で表すと?と聞かれて、私は「苦しい試合だった」とか「悔しかった」とかそう言うと思ってた。


でも彼が言ったのが「次のステップにあがるための”踏み台”」


驚いた。もう私たちよりも先に、私たちが励ます前に、彼は切り替えて前を向いてる。

そうだそうだ!この悔しさを踏み台にしてまた這い上がろう!

ギラギラした目をしてるゆづ、なんだか久しぶりに見た。その目が、どうしようもなく、好きだった。

ああ、これだからあなたを応援するのはやめられない!
どれだけ凹んでもどれだけ見るのが辛くても、その先の彼のキラキラした笑顔を想像しちゃうから。

彼がその壁を乗り越えた先の景色を一緒に見たいな、とか思っちゃうから。


そしてその日のエキシビション「花は咲く」

吐くほど泣いちゃった(笑)
最初NHKで収録されたものが放送されたときのを見たときも泣けたけど、このエキシビションはそれ以上のものだった。

多分今だったらNHK杯のホームページにあると思うから見てみてね(宣伝しとくw)

すごいね。
例えば今までゆづがノーミスの演技をしたからとか渾身の演技をしたからで泣いたことはあったけど、あんな滑ってるだけで涙が出たのは初めてだった。

リンクをいっぱいに使って優雅に舞う姿は本当に美しくて、思いがこれほどまでに伝わってきて、大粒の涙がこぼれた。

解説のあっこちゃんも泣いていた。
会場にいた人によると周りもみんな泣いていたと、そしてテレビ観戦だった私も泣いた。

素晴らしかった。本当に。
花は咲くを見て、やっぱりもう大丈夫だと確信したよ。

あなたの19歳最後の演技が「花は咲く」で良かった。


この3日間、フィギュアごとだけで言うと苦しくて辛いものだった。

今まで背中も見せなかったゆづの背中が見えてしまい、ゆづの弱さを感じてしまい、どうしたらいいかわからなかった。

だけど、彼はその悔しさを糧にまた成長した。

何かまた一つ上のステップに進んだ気がする。

今思えば、久しぶりにどん底までの敗北を味わい、悔しくて寝ることもできなくて、その悔しさを忘れずに次はやってやる、っていう、どん底から復活までのゆづがたったの三日で見れて、すっごい濃厚な三日間だったのかもw

このNHK杯があってよかった。
そう思う日がきっと来る。絶対にいつか来る。




次、ファイナルで会うときあなたは20歳だ。

10代の儚くも強くて美しい、そんなあなたに沢山のありがとうを言って、さようならをする。

そして夢と希望に満ち溢れた20歳のあなたに会いにいく。

(彼の誕生日は12月7日で、まだ今日が誕生日のわけじゃないんだけどねw)



最後はこの言葉で締めよう。



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「行く価値のある場所に、近道なんてない。」



地元仙台に帰った彼が、ファイナル直前になるまでしばらくプレッシャーなどから解放されて、どうか、今だけは、いい夢を見れていますように。