沢山のお疲れ様とありがとうを。


今年を締めくくる大会、全日本。

公式練習の映像やWSを見る限り、結弦さんは確実にGPFより調子を落としていた。

まあ予想していたとは予想していた。

GPFに出た選手は、そこから全日本にもう一度調子を持ってくるのは本当に難しいことを知っている。

GPFから全日本までわずか二週間しかない。
去年、確かにゆづはGPFも全日本も優勝しているが、去年はGPFの開催地が日本。なので、GPFが終わってから移動なしでそのまま全日本まで準備ができる。でも今年のGPFはスペインのバルセロナで。つまりGPFで一度調子を上げてから、GPFを戦い、終わってから調子を下げて、約一日かけて日本に戻ってきて時差ボケを治して、そこから全日本にまたピーキングを持ってこなくてはいけない。本当に大変な仕業。

中でもゆづは中国杯のアクシデントから三週間で怪我を治して、NHK杯出場、そこから二週間後にはGPF。そしてその二週間後には全日本、と、本当に本当に休む暇もない大変すぎるスケジュールだった。

だからゆづは一言も自分の口から調子が悪いとは言わなかったけど、調子が悪いのは見てすぐにわかった。

それとGPFの氷は柔らかかったのに対して、長野の氷は結構固かったのかな…?テレビ越しでも選手が滑るとゴリゴリと音が聞こえたし、ゆづも公式練習の時から本当にジャンプを飛びにくそうにしてた。

SPの日。
まさかの生中継で放送してくれないフジテレビにキレつつ(笑)、現地観戦組のツイートでゆづの演技の結果をドキドキしながら待った。

前半の4T。完璧。

後半の3A。完璧。

3Lzで軸が斜めになり、3Tから2Tタノに変更。

現地観戦組から軸が斜めだったとは散々聞いていたけど、想像の何倍も前軸で驚いた(笑)

手をつくギリギリで堪えて、このまま3Tをしたら回転不足の上で転倒するだけ。基礎点70%の上に、GOEで大幅に減点。
ならば、2Tにして確実に着氷して、タノにすることで出来るだけGOEのマイナスを減らそうとあのコンマ何秒で考えた羽生さんは誰が見ても本当に天才的です(笑)

この人の頭の良さの頭の回転の早さには本当に驚かせる。セカンドを2TタノにしたことでURとられてないしGOEは−0.4で収まってます。これで3Tして無理に着氷してたら確実にGOEで二点以上引かれてたよ。しかもその上URだったら基礎点の70%だ。

そしてもし最初の3Lzで手をつくギリギリで堪えてなかったら、3Lz単独ジャンプのみになってしまいSPでは三つのジャンプのうち絶対一つはコンビネーション。しかもセカンドが二回転以上という取り決めがあるので、反則として3Lzの単独の基礎点がもらえない上に基礎点の70%になる。

だからあの状況でセカンドを2Tにしたのは一番点数が出る方法で、その考え方にあの短時間で至ったゆづは秀才。

得点、94点。

納得の点数なんだけど、プロトコル見てみるとステップ、スピンのレベルがオール3だと!?おおん!?!?となり、久しぶりにスピンの回転数を見返してやった(笑)

確かに言われたら回り切ってないまま次の姿勢に入ってるね…。でもこれ世界大会だったらきっとオッケーにしてレベル4くれるだろうに容赦なくレベル3にしてくるあたり、例年以上に全日本のテクニカルパネルが厳しい…(笑)

SPで二位につけたまっちーもスピンはレベル3とレベル2。ステップはゆづと一緒のレベル3で、おお…まっちーのあのステップでさえレベル3にしてくるのか。じゃあゆづはどう見てもGPFより動けてなかったしレベル3か。と納得してしまった。

それでも4Tと3AのGOEで満点3点貰ってるゆづ。恐ろしいこの人。

今回の全日本、女子もめちゃくちゃ回転不足とられるの厳しくて、エッジエラーも容赦なくとってて、確かにちょいちょいこれでURとるかなあ…?ってやつもあったんだけど、私はそれでもいいと思う。

確かにこれが世界大会だったら、とられなかったURやDGやエッジエラーがあったかもしれない。でもその逆の場合だ。ナショナルの採点がユルユルで少しぐらいの回転不足やエッジエラーを見逃して、いざ世界大会でそこで減点されてからじゃ遅い。

世界では今、男子は確実に日本男子が最強だ。こんな強い国日本しかいない。だけど、女子はロシアが最強。日本女子もジュニアに素晴らしい選手がいっぱいいるから未来は明るいなあとは思うんだけど、それでもロシアには敵わない。

そんな最強のロシア女子にこれから対抗していくには回転不足やエッジエラーで減点してたらダメだ。だから容赦なくナショナルでも減点させてもらう。っていう日本スケート連盟の覚悟なのかと思うとそれでいいと思うし、その心意義が素晴らしいと思う。


ゆづの調子が悪いとわかっていたので、GPF以上にドキドキしたけど、それでも4Tと3Aを確実に決めてそしてGOEで満点をもらう。コンビネーションでミスをしてもすかさずリカバリーできる。
そして90点以上は確実に出してくるんだから、この人やっぱり強い。


次の日のFS。
公式練習は相変わらず調子がやっぱり良くないし、4Sは全然ハマってなかった感じだし、相変わらず不安でいっぱいでした。

4S回り切って転倒ね。パンクはダメだよ。抜けが一番怖いよ。と、とりあえずFSの前から念じまくってた私(笑)
一般の人たちで勘違いしてる人が多いからこれ覚えてた方がいい。スケヲタの口癖。「パンクは転倒より怖い」

簡単に説明すると、例えば4Sの基礎点は10.5点。

もしこれを完璧に回り切った上で転倒したらGOE−3点で7.5点はもらえる。

しかし、パンクして3Sで着氷する。
すると、3Sの基礎点4.2点しかもらえない。

これだけで3点以上差がある。一般の人は今だに転倒してるからめちゃくちゃ点数引かれる。いくら回転数が減ってもきちんと着氷してるんだから点数はあまり引かれない。っていう認識がありすぎる。

でも違うんだよ。
転倒して点数が引かれるのは旧採点方法の話。新採点方法でそれが見直された。
昔からスケート見てるくせに今だに転倒したのに一位とかおかしい!!!とか言うバカがいるけど、こういう奴らは知った口して平然と批判するから本当に一番厄介。新採点方法が受け入れられないなら、スケート見るのもうやめろよ。

だから「パンクは転倒より怖い」のだ。

ゆづは公式練習のときから4Sがパンクで2Sになったりシングルになることが多いからそれだけはダメだよと何度も念を押してた。

FS本番。

4S。転倒。でも回り切ったね。
よし、大丈夫、大丈夫!

4T。
3F。

3Lz-2T。
3A-3T。
3A-1Lo-3S。
3Lo。
3Lz。

4Sで転倒して、だけどそのあとは全てパーフェクト!素晴らしいよ!

しかも危なっかしいジャンプなんか一つもなく全て加点がつく素晴らしいジャンプ。

そしてSPでも前軸になり、GPFでは転倒した3Lzを見事に修正してきたー!ふわっと降りる綺麗なジャンプ。

特に最後の3Lz単独を決めた時に何故か鳥肌が立った。その背中を見て、鳥肌が立った。

ビールマンスピンは回避してきたし、イナバウアーもキツそうだった。GPFより明らかにスピードもキレもなかった。

そんな中でもサルコウ以外のジャンプを全て決めた。

一つジャンプを転倒したってやっぱり一人だけ圧倒的に強いんだよ。
ジャンプの着氷の綺麗さも一つ一つのエルメンツの完成度の高さも技術点の高さも何もかもがやっぱりダントツで。見てて、こんな人に誰が勝てるんだろうって思えてしまう。

海外の解説者も日本の解説者もみんな口を揃えて言うけど、やっぱり彼だけ別次元のスケーター。いつの間にか彼だけ別次元になってしまった。

FSの得点192点。他の選手がTES多くて80点台に対して、一人だけ100点超えてる結弦さん。二位の昌磨を結局30点以上引き離して優勝。3連覇。

無事に演技が終わって全ての方向にいつも以上に丁寧にお礼をするゆづ。オーサーの元へ向かう途中、ファンに何かを言われてそれに応えてニコッと笑い「ありがとう」と言う表情が恐ろしいほど2012年の17歳のときのニースの羽生さんの表情と被って驚いた。

キスクラでGPFと変わらず笑顔なんだけど、なんていうか覇気がない。本当に本当にお疲れの顔してる。笑ってるんだけど、なんか儚い。尊い。このまま消えちゃいそうなぐらい尊い。

疲れたよね。この八週間本当に大変だったよね。いっぱいいっぱい頑張ったよね、お疲れ様。本当にお疲れ様。そして3連覇おめでとう。

次の日、腹痛の精密検査をうけるためエキシビを欠場と。演技見ても表情見ても本当にお疲れなのは誰もが分かってたけど、私たちが思ってた以上に疲労が溜まって大変な状態だったんだね。

FSが終わった時、お腹を抑えてたのはそういうことか。腰痛だと思ってたけど、腹痛だったのか。GPFのときから継続的に腹痛がきてたって。中国杯のアクシデントのときに入ったみぞおちが原因なのかな。どうか大事には至りませんように。

エキシビは出なくてよかったかもね。本当にがんばったから、今こそ神様がしっかり休みなさいって言ってるんだよ、きっと。しっかり休んで体調整えて世界選手権で元気な姿、見せてね。
とりあえず今年、その華奢な背中で沢山のものを背負って、弱音をはかず最後まで頑張り続けてくれて本当にありがとう。


全日本最終結果とその選手たちの今シーズンの結果だけをあげてみると

一位 羽生結弦(GPF優勝)
二位 宇野昌磨(JGPF優勝)
四位 町田樹(アメリカ大会優勝・GPF出場)
五位 無良崇人(カナダ大会優勝・GPF出場)
六位 山本草太(JGPF準優勝)
七位 村上大介(NHK杯優勝)

となる。
日本男子の何が凄いってグランプリシリーズで優勝したりGPFに出場できてる選手でさえ表彰台に上がれないってことだ。日本男子のレベルの高さが恐ろしい。

全日本は毎年沢山のドラマが生まれる。
ゆづもよく「全日本は違う。全日本は緊張する」と言っているし、沢山の選手が口を揃えて「全日本が一番大事」だと言う。

全日本がどれほど独特な雰囲気に包まれた中の試合なのか、そして選手がどれだけ全日本王者の名が欲しいかはよく知ってる。

去年は確かにソチ五輪選考会も兼ねていて例年以上に殺伐とした雰囲気だったということはわかってる。でも今年だって世界選手権3枠はGPFに出場した羽生・町田・無良がかたいと思っていたのに、台乗りしたのは羽生・宇野・小塚で、おいおいこれどうなるよ…って激戦中の激戦だった。

今は日本フィギュア界ではもちろんゆづがダントツで人気だし、全日本の観客もほぼゆづファンだってわかってる。ゆづへのプレゼントの数はやっぱり誰よりも多いしバナーの数も多い。

でも、この全日本。歓声はゆづがダントツって訳では全然なくてどの選手にもいい演技をしたら盛大な拍手で讃えよう。良くなかったら温かい拍手で後押ししてあげようね。っていうのがこれほどまでに伝わってきた温かい会場だった。

そしてやっぱり今までの全日本は異常だったんだなと改めて気付く。

だって今でも2012年の全日本はゆづが初めて全日本優勝したときだったのに表彰式のゆづの表情が見てられない。
確かにFSでは大ちゃんの方がいい演技をしたけど、それでも優勝したのはゆづだった。なのに何故会場が優勝者を祝福してくれる空気じゃないっていうのは本当に辛かったしショックだった。

あの時はどれだけゆづのファンは盛大にゆづに拍手してあげたくても会場にいるのは殆どが大ちゃんファンでゆづファンがどれだけ拍手してもその拍手は少ないものにしかならなかった。

大ちゃんからゆづへと世代交代がハッキリ目に見えた瞬間だった。

今はこうやってゆづのファンが殆どになった。

あの時からゆづのファンだった人たちが、あの時あんなことされたから私たちも他の選手の時はああいう対応してやろうね。じゃなくて、あの時に嫌な思いしたからこそ私たちはどの選手にも温かく応援しようね。って思ってるんだと思うと、私はそれは本当に素晴らしいことだと思いました。

今回の全日本は今までと打って変って激戦だけど会場は温かくて、SPでのまっちーへの拍手の大きさ、FSでのこづへの大声援を見て、お客さんのそんな気持ちが伝わってきて、見てて本当に気持ちの良い大会でした。

2012年の全日本選手権を見たときに私が決めたことは、下り坂こそ美しくしようということ。私はあの頃の大ちゃんファンのようには死んでもなりたくない。

ゆづもこれからもしかしたら他の選手に抜かれるときが来るかもしれない。ベストの演技をしたのに負けるときが来るかもしれない。その時に一位の選手を心から「おめでとう」と言えるファンであろうと。そう心に誓った。

実際、フィギュアスケート選手は海外も国内も魅力的な選手が沢山いて、一人ずつブログで紹介してやりたいぐらい好きな選手がいて(笑)

もちろんゆづを一番応援してるけど、あの選手にも勝ってほしい、あの選手にも表彰台のぼってほしい!ああ、表彰台三つじゃ足りない!!!って毎試合思ってるから私(笑)

だからこそフィギュアスケートにどんどんのめり込んでいくし、これからもどの選手も心から応援できるそんなファンでありたい。





GPF、全日本とゆづを見て改めて思ったことは、今、ゆづは孤独だ。

それは周りに人がいなくて孤独とかそういうことではなくて、世界王者故の孤独。

GPFも全日本もゆづは自分の演技をしっかり出来るとこうやってダントツで勝つ。

2012年はゆづは大ちゃんの背中を追っていた。そして大ちゃんを抜かして、2013年にはソチ五輪金メダリスト候補の世界王者パトリックチャンの背中を追っていた。

そして2014年、これらのライバルに勝ち見事ソチ五輪金メダリストになった。

王者になったことで追う背中が誰一人いなくなった。

勝ち方も二位を30点以上突き放す圧倒的な勝ち方で確かに強い王者。

世界のトップスケーターも口を揃えて「ユヅルには敵わない」と言う。

それは確かに、確かに素晴らしいことだ。

だけど、それが孤独でもある。
誰も自分の背中を追ってくれず、常に自分一人だけの戦い。

フィギュアは元から自分との戦いであるスポーツだけど、それでもヨナと真央、ヤグとプル時代を見てると、最大のライバルがいることで更に強くなり、そして試合に楽しみを見出すことができる。

ゆづは人より倍ほど負けず嫌いな選手だから、競い合う選手が必要なんだ。

王者は孤独。




ねえ。
でも、そんな中で2014年の世界選手権で結弦のライバルとして名乗りを上げてくれたのがまっちーだったじゃないか。

ソチ後の世界選手権、絶対ミスらなかったSPパリの散歩道で珍しく転倒してしまったゆづに対して、パーフェクトな演技をしてSP終了時点でゆづを六点引き離して、俺はお前を倒してやるぞと宣誓布告してくれたのがまっちーだったじゃない。

まっちーがゆづとしのぎを削る壮絶な戦いをしてくれたからこそ、ゆづの目にまた火が灯った。ゆづが世界選手権でソチ五輪のリベンジとしてFSでパーフェクトな演技ができたのは間違いなくまっちーがいたからだって、私、思ってたんだよ。

表彰台の一位・二位を男子では初めて日本人選手が独占して、二つの日の丸を上げてくれた。

あの時の絶景、忘れたことなんてなかった。

表彰式の後、二人でインタビューエリアで「結弦がいたからここまでできた」「樹くんがいたから楽しかった」って言う二人を見て、なんていい関係性なんだと。

この二人が、大好きだった。

歳は四つも離れていて、スケートのタイプも性格も何もかもが正反対で絶対この二人気が合わないだろうなあ〜って思ってたのに、実はジュニア時代から不思議とウマが合ってて。

昔からとってもとっても仲良しで。ゆづは間違いなく日本の年上のスケーターの中ではまっちーが一番好きだったと思う。

お喋りな二人。話なんて全く合わなさそうなのに、まっちーの何を言ってるかよくわからない難しい話()を笑顔でうんうんって聞いてるゆづを見るのが好きだったし、ゆづの弾丸トークを「そうだねえ」って優しく相槌打ってくれるまっちーを見るのが好きでした。



「来年は僕、これ(金メダル)狙います」

世界選手権後にゆづとまっちー二人のインタビューでゆづの金メダルを指差してまっちーが言った言葉だ。

ねえ、まっちー。来年は狙うって言ってくれたじゃないか。なのになんでやめちゃうんだよ。



「来年は容赦なくぶっ潰す」

まっちーにそう宣誓布告されたときのゆづの嬉しそうな笑顔。

ゆづの王者ゆえの孤独を救ってくれたのがまっちーだったんだ。ゆづにライバル発言してくれることがまっちーの最大の優しさだった。

まっちー、まだゆづのことぶっ潰してないじゃない。

全日本前にゆづとまたしのぎを削る戦いをしたいって。彼もあの性格だからそれを望んでるって。言ってくれたじゃない。

それ聞いた時、私ほんとに嬉しかったんだよ。
ゆづもきっとまっちーがライバル発言してくれて本当に本当に嬉しかったはずなんだよ。

全日本のSPでまっちーが素晴らしい演技でゆづの後に続いて二位についたとき、ああやっぱりゆづを抜かせるのはまっちーしかいない…!って確かに思ったんだ。

世界のトップスケーターの中でもゆづと勝負できるのは私が見る限り、まっちーだけだった。
まっちーにもしかしたらいつかゆづがぶっ潰される時が来るかもしれないって思ってた。そう思えることが、本当に、嬉しかった。

まっちー。本当に、本当に、やめちゃうの…?

嫌だよ。嫌だよ嫌だよ。
寂しいよ。ゆづとまっちーの表彰台での2ショットがまた見れると思ってたから、もう見れないなんて、そんなの、嫌だよ。

受け入れなくてはいけない運命だって分かってるけど、まっちーのこと大好きだから、そんな簡単には受け入れられないよ。

でも突然発表したとき、私たちファンも他の選手も唖然としていたけど、まっちーだけ対照的にめちゃくちゃ晴れやかな笑顔だったんだよ。

少しでも悔いがある顔、悲しそうな顔してたら「まっちー戻ってこい!」って大声で言えるのにね。絶対に彼は泣かなかったし悔いなんて本当に一つもない顔してたんだ。

そんな顔を見たとき、ああこの人をちゃんと送り出さなきゃいけないんだって思った。

GPFが終わった時「GPFはコンディションも最悪で、最初は辞退しようと思った」って言っていて、それは卒論が大変だからだとわかっていた。その後にまっちーが繰り返し繰り返し言っていたのが「GPFより全日本を優先したかったから辞退しようと思った」

全日本が大切な試合なのはわかってるんだ。わかってるけど、ゆづがGPFにどうしても出たかったようにまっちーがGPFより全日本のほうが大事って試合に大小をつけてるのがなんかまっちーらしくなくて。

「え、なんでそんなこと言うのまっちー」って正直思ってた。わかってるけど、その言葉は聞き捨てならないよって。

来年の世界選手権のことも今年もGPFのことも殆ど語らなかった。ただ、本当に全日本に思いがあるようなのは伝わってきて「全日本観に来て下さいね」って。

全日本をいつも以上に大切にしてたのは、今年のまっちーのフリープログラムが第九だからだと思った。

「GPFでは完成させることが出来なかった第九を全日本で完成させたい」

って。
まっちーよ。でも、私たちはまだ完成した第九を見せてもらってないよ。

シーズン最初に第九のイメージを「極北」だと言ったまっちー。

極北だって。また語録が出たよ。とクスクス笑ってた私たち。





今気付いた。
「極北」の先には、何もないんだ。

「僕からはこの言葉について語ることはしない。感じ取ってほしい」

そう言った町田さん。
ああ、そうだったんだ。

まっちーは全日本でやめるって決めたのは当日だったとしても、少なくとも今シーズンで終わるつもりでは最初からいたんだね。

だからこそ、最後にあの難しいプログラム第九を覚悟して披露してくれたんだ。




全てのことに気付くのが、遅すぎた。

何もかも、気付くのが、私たちは遅すぎた。
終わってから気付いても、もうどうしようもないのに。


全日本のSPでの素晴らしい演技。
そしてその後必死に込み上げてくるものを堪えてた町田さんの表情、忘れてません。

そして今年の世界選手権のエデンと火の鳥。本当に最高の演技だった。エデンの後のお客さんの熱狂様が未だに頭にこびりついてる。一生、忘れません。

本日、引退することを決めたって。
コーチにも朝話したって。スケート連盟にも他の選手にも誰にもあの発表の時まで話してなかったって。

本当に自分一人で決めて、誰にも相談せず、一人で決めて。
なんかそれがすっごいまっちーらしいなあって。

その場に羽生さんもきっといたかっただろう。絶対絶対いたかった。そしていてほしかった。

病院でまっちーの引退を聞いたゆづを想像するとまた泣きたくなる。

もし、その場にゆづがいたら、きっと泣いてたんだろうね。泣きながらまっちーに抱きついてたはずだ。それをまっちーが抱きとめ爽やかに笑いながら「結弦、今までありがとうね」とか言って。

それを私たちも見たかった。けど今でもこんなに泣きまくってるんだから、それを見たら泣きすぎて立ち直れないところだったね(笑)

でも、あなたのことが大好きで、そして最大のライバル結弦にもいつかきちんとさようならを言ってあげてよ、まっちー。その場面は私たちは見れなくても、もういいから。


まるで。
まるで、花火のような男だった。

つい二年前まで五輪出場選手候補にも入ってなかった。それが五輪シーズンに「五輪に出る」と言い、見事その言葉通り激戦の五輪の出場権を堂々手に入れ、五輪出場後に「僕は世界で通用する、世界でメダルを争える選手だということがわかった」と言い、その言葉通り一ヶ月後の世界選手権で五輪チャンピオンとメダルを争い合った。

まっちーの独創的な完成度の高い演技を見て、まっちーの時代がきたぞ!ってなって、これからどんどんどんどん強くなるぞ、ゆづを脅かす存在になるぞってワクワクしてたら、突然「引退します」って言い晴れやかな背中でリンクを去って行った。

まるで、何も悔いも、リンクにはもう残してないように。

普通ならどれだけ研究の方が楽しくなったって世界選手権で終わるのが妥当だと思う。そう考えるのが普通の選手だと思う。でも、そうしないのがまっちーで。一回やめると自分で決断したらすぐにスパッとやめる。最後の最後まで町田樹らしい去り方でした。

町田語録が出るたびに私たちは楽しませてもらったし、町田樹にしかできない独創的な芸術性の高い演技にいつも魅了されてました。

競技者としての町田樹をもう一生見れないなんて本当に辛いです。悲しいです。せめて、あの全日本の第九を最後だとわかった上で見たかったという思いは今でもあります。


引退の時なんていつ来るかなんてわからないんだなあと改めて思った。ここまでやるよと宣言してくれる人もいれば、急にやめると言う人もいる。そして、誰だっていつかは引退する時が来るんだね。

芸能人みたいに何年も何年も出来るもんじゃない。いつかは絶対終わりが来る。

そのことを今回で改めて実感できたから、いくら同じプログラムでも一つ一つの演技がその時にしか出来ないものだからしっかり目に焼き付けていくべきだなあ。

まっちー、今でも嘘であって欲しいと思ってるよ。
「冗談でした☆」って言われたら手放しで喜ぶぐらい信じたくないよ。


でも、まっちーが決めたことだから。
私たちは悲しくても辛くても嫌でも笑顔で見送らなくてはいけない。

今までありがとうございました。
本当に本当にありがとうございました。

あなたの演技に沢山の夢や勇気を貰いました。

まっちーのことだから第二の人生もきっと光り輝くものになるんだろうね。

あなたの幸せをずっと願っています。












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まっちーの言葉で叶っていない言葉は沢山ある。

有言実行していなかったからこそ、私たちは「なぜ今、やめるのか」と問いかけた。彼にそう問いかけたかった。

だけどその叶っていない言葉以上に、言葉通りになったことも沢山あった。有言実行したことだって沢山沢山あった。

だから、もういいんだ。

何よりまっちーがもう何の悔いもないって晴れやかな顔をしてたからもういいんだ。

未完成なものほど、時に美しい。



セカンドステージに進むあなたに沢山の花束を。

夢を与えてくれたあなたに大きな感謝を。

ありがとう。
お疲れ様でした。